ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドロームとは

「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」のことを「ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)と呼びます。運動器とは、骨・筋肉・関節・靭帯・腱・神経など、身体を動かすために欠かせない組織や器管の総称です。
ロコモティブシンドロームという概念は2007年に、日本整形外科学会によって生み出されました。

ロコモティブシンドロームの
チェックポイント

ロコモティブシンドロームになる前から運動器の機能低下を自覚し、悪化を防ぐための運動習慣をできるだけ早い時期から始めていくことが重要です。
「ロコモチャレンジ!推進協議会」の公式サイトでは、7つの項目にチェックを入れるだけでご自身のロコモ度が確認できる、「ロコチェック」あります。

ロコチェック

ロコチェック

  1. 家の中ですべる、つまずく
  2. 片足立ちで靴下がはけない
  3. 階段を昇る時、手すりが必要になる
  4. 横断歩道を青信号で渡り切れない
  5. 2kg程度(1Lの牛乳二本程度)の買いものをした時、
    持って帰るのが難しい
  6. 15分くらい続けて歩けない
  7. やや重い家事を行うのが難しい

要介護の原因となる
ロコモティブシンドローム

日本では高齢化が進んでいます。高齢化社会によって近年では、運動器の障害によって、一人で日常生活を送るのが難しくなった高齢者が増えています。
2019年のデータを確認すると、介護が必要になった原因の37.6%が、運動器の障害だと分かります(「骨折・転倒」「高齢による衰弱」「関節疾患」のパーセントを合計して算出しています)。
また、「要支援1」の方の52.1%、「要支援2」の方の「49.6%」に、運動器の障害が起こっていたことも報告されています。この統計から、運動器の障害と、日常生活の自立度の低下は大きく関わっていることが分かります。
また、過去に脳血管障害を患ったことで、身体に麻痺などが残ってしまい運動器の障害が起こるケースも多いです。
平均寿命は延び続けていますが、健康的に長生きするには、運動器の健康を守ることが欠かせません。
ぜひ、運動器の健康に対する意識を高め、ロコモティブシンドロームを防ぐための運動習慣を今からでも行うようにしましょう。

運動器の疾患

  • 肩こり
  • 腰痛
  • 骨粗しょう症
  • 骨折
  • 関節リウマチ
  • 背柱管狭窄症
  • 変形性膝関節症
  • 変形性脊髄症
  • 四肢・体幹の麻痺

など

加齢に伴う運動器の機能低下

加齢に伴う運動器の機能低下

  • 関節や筋の痛み
  • 四肢や体幹の筋力低下
  • 体力や全身持久力の低下
  • 筋短縮や筋萎縮による関節の可動域制限

など

運動器に起こる疾患や、老化からくる運動器の機能低下が原因で、立つ・歩くなどの機能やバランス機能をはじめ、指先・手先を使って細かい作業を行う力や反応する時間、運動スピード、深部感覚などが衰えてしまいます。
これらの機能や力が衰えてしまうと、移動や更衣、入浴、排せつ、洗面など、日常生活上で欠かせない動作も難しくなり、介助が必要な状態になる恐れがあります。
身体がスムーズに動かなくなると、外出に対するハードルが高くなり、自宅に閉じこもりがちになります。外出時間が減ることで運動する時間が減り、さらに運動器の機能低下が進行してしまいます。転びやすくなったり、怪我や骨折しやすくなったりしてしまいます。

ロコモティブシンドロームの
予防と治療

どの年代の方でも、「ロコモティブシンドロームが心配」「以前より身体が動かしにくくなった」と思った方は、無理のない範囲から運動を習慣化してみたり、ライフスタイルを見直したりするなど、一度ご自身の習慣を振り返る必要があります。
また、痛みなどの症状が現れている場合は、整形外科へ受診し、適切な検査・治療と、理学療法士による運動療法を受けることを推奨します。

院長はロコモアドバイスドクター

当院の院長は、ロコモティブシンドロームに関する知識と予防を意識させる啓発活動に取り組んでいる、日本整形外科学会所属の専門医です。

ロコモーショントレーニング

「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」を継続することで、健康的な足腰を構築することができます。「スクワット」と「片足立ち」という2種類の運動パターンがロコトレの主な内容です。
なお、各個人ごとに「ロコモ」のレベルは異なります。無理しない程度にご自身に適したロコトレを行ってみてください。

ロコトレの種類は2つだけ。
毎日続けやすいのが魅力です!

バランス力をアップさせるロコトレ
片足立ち

1日3セット(1セットは左足、
右足それぞれ1分間ずつ)

1日3セット(1セットは左足、右足それぞれ1分間ずつ)

  • 「転ばないように、掴まりやすいものがある環境で行ってください」
  • 「地面に付かないぐらいで構いませんので、片足を上げましょう」
片足立ちをする時のポイント
  • 机に指、もしくは手を置いて片足立ちをするとバランスを崩しにくくなります。
    片足立ちをしていて、バランスが不安定になる方は十分気を付けた上で、この方法を行ってみてください。

下肢筋力を強化するロコトレ
スクワット運動

1日3セット(1セット6~5回)
1日3セット(1セット6~5回)
  • Step1 真っ直ぐ立った状態で、肩幅まで足を開きます。
後部にお尻を引きながら、2~3秒間じっくりと膝を曲げましょう。
  • Step2 後部にお尻を引きながら、2~3秒間じっくりと膝を曲げましょう。
  • Step3 その後、同様にゆっくりで構いませんので、最初の状態に戻していきます。
スクワット運動が行えない時

スクワット運動が行えない時スクワット運動が行えない方は、無理せず椅子や机を利用して運動を行いましょう。 この場合、椅子に座った状態から手を机などに置いて、立つ・座るの動きを反復してみてください。
手を机に置かなくても問題無いという方は、手を固定せず行ってみても良いでしょう。

スクワット運動をする時のポイント
  • 膝を曲げる角度は90度までにしましょう。
  • スクワット運動をしている時は呼吸をしっかり行ってください。
  • スムーズにスクワット運動が行えるという方は、セット数や回数を多くしてみましょう。その場合、回数はご自身の体力を考えた上で出来る範囲で構いません。
  • 自力でスクワット運動が行えない方は、前述したような椅子や机を使う方法を行ってみてください。 ただし、無理をしない事が前提です。

出典:  日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 

ロコトレに組み合わせるものとして、
次のようなトレーニングもおすすめ。
体力がある方は挑戦してみてください!

脹脛筋力を強化する運動 ヒールレイズ

1日の目安:3~2セット×20~10回
(回数は体力に合わせて変更してください)
直立した状態で右足と左足の踵を上げます。
  • Step1 直立した状態で右足と左足の踵を上げます。
少しずつで良いので右足と左足の踵を下げていきます。
  • Step2 少しずつで良いので右足と左足の踵を下げていきます。
  • Step3 この動作を反復します。

体力やバランス力がある方は、手を壁などについても構いませんので、片足のみのヒールレイズも挑戦してみてください。

ヒールレイズが行えない時

ヒールレイズが行えない時歩行や立った状態が不安定でヒールレイズが行えない方は、椅子の背もたれに手をついてヒールレイズをしてみましょう。このようにする事でバランスが取りやすくなります。

ヒールレイズをする時のポイント
  • 踵を上げすぎると転倒しやすくなってしまうので注意してください。 踵を上げる高さは無理をしない範囲で構いません。
  • バランスが不安定になってしまう方は、前述したように壁や机に手をついてヒールレイズをしてみてください。

下肢の筋力強化や柔軟性・体幹能力を高める運動 フロントランジ

1日の目安:3~2セット×10~5回
(回数は体力に合わせて変更してください)
1日の目安:3~2セット×10~5回(回数は体力に合わせて変更してください)
  • Step1 両足で立った状態で、腰に右手・左手をそれぞれ当ててください。
足を少しずつ前に踏み込みましょう。
  • Step2 足を少しずつ前に踏み込みましょう。
    ※できるだけ大きく踏み込んでください。
腰を太腿が水平になる程度まで低くしてください。
  • Step3 腰を太腿が水平になる程度まで低くしてください。
下げた腰を最初の状態の高さまで戻し、踏み込んだ足も戻しましょう。
  • Step4 下げた腰を最初の状態の高さまで戻し、踏み込んだ足も戻しましょう。

日々こうした運動を続ける事でそれぞれの運動効果が期待しやすくなります。 ロコモーショントレーニング(ロコトレ)を行い、健康的な足腰作りを始めてみては如何でしょうか。
ロコトレは無理して行っても良い結果に繋がりません。 行いやすいペースで継続していく事が大切です。
出典:  日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 

腰や膝の痛みで
お悩みの方へ

痛みを腰や膝に感じる方には、次のような体操がおすすめです。
ただし、痛みが激しい場合は医療機関に相談した上で体操をするようにしてください。

腰痛体操

各体操は1日3セット(1セット10回)を目安に行ってみましょう。

腹筋を鍛える運動

腹筋を鍛える運動
  • Step1 体を寝かせ、仰向けになった状態で、膝をおり曲げてください。
  • Step2 その後、少しずつで構わないので腹部に力を込めながら両方の肩と頭を持ち上げていきます。
    この時、背中を丸めたような姿勢で行う事が大切です。
  • Step3 両肩と頭を持ち上げたら、その姿勢を5~10秒間維持しましょう。
  • Step4 その後、少しずつ肩と頭を降ろして元の仰向けの状態に戻します。

背筋を鍛える運動

背筋を鍛える運動
  • Step1 体を寝かせ、うつ伏せになった状態で、腹部の下に枕を置きます。
  • Step2 その後、少しずつで構わないので上半身を10cmくらい持ち上げていきます。
    この時、しっかり背筋に力を入れる事が大切です。
  • Step3 上半身を持ち上げたら、その姿勢を10~5秒間維持しましょう。
  • Step4 その後、少しずつ上半身を降ろして元のうつ伏せの状態に戻します。

出典:  日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 

膝痛体操

この体操は各足毎に10回行ったものが1セットとなります。 これを1日3セット行うのが基本です。

大腿四頭筋を鍛える運動

大腿四頭筋を鍛える運動
  • Step1 体を寝かせ、仰向けの状態で、片方の膝を真っ直ぐ伸ばしてください。
    この時、伸ばす足の太ももにはしっかり力を込めましょう。
  • Step2 次に膝を伸ばした方の足をその状態のまま、10cm程度高く上げてください。
    少しずつ足を上げていくような感じで構いません。
  • Step3 足を10cm程度まで上げたら、その姿勢を5~10秒間維持しましょう。
  • Step4 その後、少しずつ足を下げて最初の状態に戻します。

出典:  日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 

運動は「週2回×30分」を目安に
してみましょう!

ロコモティブシンドロームの予防を考える場合、週2回、1日30分程度の運動を目安にしてください。
運動をする際は汗を掻き、呼吸がやや荒くなる程度に体を動かす事(3メッツ以上の運動)を心掛けましょう。

メッツ(METs)

メッツ(METs)とは、日々の運動やトレーニングに関するエネルギー消費を数値化したものです。 座って落ち着いている状態、および運動をしていない状態を基準の1メッツとしています。
ちなみに犬などの散歩をした場合のエネルギー消費量は3.0メッツ程度です。 これはつまり、運動をしていない状態と比べると3倍のエネルギーが消費されるという事を意味します。

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